開発ストーリー

冬用タイヤ 自動判別システム

冬用タイヤ規制の省力化・効率化をサポートするシステム

開発期間:2016年(平成28年)~2019年(令和元年)

冬用タイヤ 自動判別システムは冬用タイヤを画像判別するシステム

冬用タイヤ 自動判別システムとは、産業用高感度カメラで撮影した画像でスタッドレスタイヤとノーマルタイヤを判別するシステムです。
四国の高速道路でも山間部では年に数回かなりの積雪量があります。積雪が原因で通行止めが発生すると、物流も止まってしまいます。スタッドレスタイヤを装着している車の交通を確保することが冬用タイヤ規制の目的です。
冬用タイヤのチェックエリアの数十m手前に冬用タイヤ 自動判別システムを設置します。時速約30kmで通過する車のタイヤを撮影。AI(人工知能)が画像を判別し、リアルタイムでスタッドレスタイヤ、またはノーマルタイヤの判定をビープ音で知らせる仕組みです。スタッドレスタイヤの車はそのまま通過し、ノーマルタイヤの車は誘導員がチェックポイントに誘導します。
冬用タイヤ規制の1次選別にこのシステムを導入すると、導入前と比較してチェック台数を6割削減することができました。単位時間あたりのチェック台数は3倍になり、効率化につながります。また、規制による渋滞も大幅に緩和できます。
このシステムは四国だけでなく、京都府舞鶴若狭道福知山IC、広島県中国自動車道安佐サービスエリア上り、大分県大分自動車道狭間BS、また上越地方や中部地方でも活用されています。

開発に至った経緯

冬用タイヤ規制による渋滞や作業員の負担が課題

冬用タイヤ 自動判別システムの導入前は、誘導員が車を誘導し、タイヤチェック要員が1台ずつ車を止めて目視でタイヤをチェックしていました。車を止めることによる渋滞の発生が課題でした。また、冬用タイヤ規制対象の地域はマイナス5℃やマイナス10℃の過酷な環境です。そこで長時間に渡り作業する誘導員やタイヤチェック要員の負担は大きいものでした。
冬用タイヤ規制の効率化やチェックに関わる人たちの負担を減らすために、冬用タイヤの判別の自動化を目指しました。

開発の工夫や苦労

安全性を絶対条件に掲げた判別システムの確率

冬用タイヤ 自動判別システムでは、1秒間に約50枚撮影を行い、カメラの前を通過するタイヤを検出して自動判別を行います。AIはスタッドレスタイヤ特有のサイプと呼ばれる細かい溝やタイヤのパターンを見て判別します。開発ではAIにスタッドレスタイヤ、ノーマルタイヤなど実際に使用されている約1万5千本ものタイヤを学習させました。
路面が乾いているときがあれば、濡れているときもあります。また、昼のときがあれば、夜のときもあります。様々な条件のもとで撮影したタイヤ画像をAIに学ばせています。
開発当初はタイヤのデータの蓄積が無く、撮影画像だけでスタッドレスタイヤとノーマルタイヤを判別していたため精度が高くありませんでした。撮影した画像を活用して機械学習をさせたり、AIに判別させたりと、解析手法や画像処理手法を試行錯誤しました。
単純に精度を上げるだけなら、「スタッドレスタイヤとノーマルタイヤを見分ける」ことに対しての精度は90%を超えていました。「スタッドレスタイヤをノーマルタイヤ」に、または「ノーマルタイヤをスタッドレスタイヤ」に誤判別することを容認する場合です。
しかし、このシステムは、スタッドレスタイヤのスクリーニングを用いるため、「スタッドレスタイヤをノーマルタイヤ」に誤判別することは許されても、「ノーマルタイヤをスタッドレスタイヤ」に誤判別することは絶対に許されません。この条件をクリアしながら、精度確保することが開発で苦労した点です。

自動判別システムが、スタッドレスタイヤと自動判別した場合でも、その判別の信頼度が低い場合、どちらかと言えばスタッドレスタイヤと判別したときには、ノーマルタイヤと判定し、危険側の誤判別を回避するようにシステムを調整することに苦労しました。
雪や融雪剤の塩分に耐えられるように配線の無線化など、機材の耐久性向上にも留意しました。

今後の展望

冬用タイヤ規制のさらなる自動化とシステムの進化を目指したい

画像データを毎年蓄積して、継続的に精度向上に取り組んでいます。2020年度は判別精度が大きく向上し、現場からも精度が高くなったとの評価をいただき嬉しく思っています。
現在は、冬用タイヤ規制の1次選別に使用していますが、誘導員の負担削減のために、たとえば判別後のチェックエリアへの誘導する手法についても検討していきたいと考えています。
2021年、国土交通省は使用限度を超えた冬用タイヤの使用を禁止するなど、冬用タイヤの安全性をルール化しました。また、近年増えてきたオールシーズンタイヤも判定対象に加わっています。年々厳格化する冬用タイヤ規制にあわせて、判別支援ができるようにシステムを進化させたいと考えています。

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